漢方外来
漢方を研究している医師の中には現代医学と漢方医学を併用するのは無理だと考える人もいるが、西洋医学、東洋医学という狭い考え方にとらわれず、漢方の使い方を心得た上であれば、私は患者さんのために積極的に併用するほうが良いと考えます。
漢方的診断方法
漢方医学では、病気を単に病変の起こっている局所的な問題とはみず、生体に襲いかかる病毒と、生体を守ろうとする体力の戦いととらえます。襲いかかる病毒は一緒(西洋医学では同じ病名)でも、患者さん一人一人の体力は異なりますから、使用する漢方はそれぞれ異なります。
どのような漢方を使用するか、患者さんの体力を診断するのを「証(しょう)」といいます。漢方的モノサシです。
漢方的モノサシは大きく分けて2つあります。
1.虚実:体力が落ちこんで病気になっているか(虚)、体力が充実しすぎて病気になっているか(実)。体力の質を判断します。
2.陰陽:病毒よりも体力が勝っている状態(陽証期)、体力が劣ってきている状態(陰証期)。体力の量を判断します。
診察も、西洋医学では原因をみきわめ、病名を決定するために行うのに対し、漢方医学の診察で決定されるものは「証」です。
漢方の診察方法は、望、聞、問、切の四つがあります。
1.望診は体つき、顔色など
2.聞診は声、体臭、咳など
3.問診は自覚症状、既往症、日常生活など
4.切診は脈を診る脈診、舌を診る舌診、腹部の状態を診る腹診
もちろん西洋医学的な検査、血液検査、肝機能検査、血糖の検査、レントゲン、心電図、脳波、CT、MRIなども大いに活用します。
漢方でやるからには、何が何でも漢方の診断だけで、というような狭量さは、私は、真に患者さんの幸福を願う医師のとるべき態度ではないと考えています。
よく漢方治療の対象にされる病気
産婦人科
更年期障害、血の道症、冷え症、不妊症、月経不順、月経困難症、習慣性流産、妊娠悪阻、妊娠中毒症、貧血、自律神経失調症
内科
循環器疾患:高血圧症、低血圧症、動脈硬化症、狭心症
呼吸器疾患:風邪、インフルエンザ、気管支炎、気管支喘息
消化器疾患:急性・慢性-胃炎・腸炎、胃下垂、胃アトニー、食欲不振、下痢、腹痛、便秘、過敏性大腸症候群、慢性肝炎
代謝、内分泌疾患:糖尿病、肥満症、通風、甲状腺機能亢進症
腎疾患:浮腫、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎
神経・関節疾患:神経痛、関節リウマチ、頭痛・偏頭痛
その他:不眠症、手術後不定愁訴、手術後体力低下、痔疾
小児科
小児虚弱体質、小児夜尿症、小児夜啼症
泌尿器科
膀胱炎、尿道炎、尿路結石、前立腺肥大症
耳鼻咽喉科
アレルギー性鼻炎、メニエル症候群、副鼻腔炎、中耳炎、扁桃炎、咽頭炎、口内炎
皮膚科
湿疹、じんま疹、アレルギー性皮膚炎、にきび、肝斑、皮膚掻痒症
精神科
神経症、不安神経症、ヒステリー、うつ病、てんかん
眼科
老人性白内障、仮性近視
ただし、治療はあくまでも西洋医療、漢方医療、両者の長所を取り入れながら進めることが重要です。